第2話で書いたように、決算書から様々な経費を調べ始めました。
その中でも、一番経費としての額が多かったのが外注費です。
当時の外注費は年間8,700万円から1億500万円ほど。
私たちは金属製品を製造していますが、すべての工程を自社でできるわけではありません。特殊な加工や、自社設備では対応できない加工は、協力会社へ依頼します。
そのため、取引先が数十社あること自体は、ごく普通のことです。
しかし、発注状況を調べてみると、ある異変に気付きました。
ある1社に対して、毎月500万円ほどの発注が続いていたのです。
さらに調べると、その会社は私たちと同じような仕事をしている同業者でした。
一方、社内では毎日ほぼ定時退社。
時には、
「今日は仕事がありません。」
そんな声まで聞こえてきます。
仕事が足りないと言われる現場。
それなのに、自社でも十分対応できる加工を、毎月何百万円も外へ発注していたのです。
私には、その状況がどうしても理解できませんでした。
さらに調査を進めると、その会社が、発注を担当していた社員と個人的に親しい関係にある会社だと分かりました。
理由を尋ねると、返ってきたのは、
「向こうの会社が仕事がなくて困っているから。」
という言葉でした。
私は、
「でも、うちの会社は赤字ですよ。」
と伝えました。
すると返ってきたのは、
「そんなことはどうでもいい。」
という一言でした。
言葉を失いました。
もちろん、この社員一人だけの問題ではありません。
本当に驚いたのは、こうした発注が長年見過ごされ、誰も疑問を持たなかった会社の仕組みそのものでした。
この状況を変えるため、まずは「自社でできる仕事は、自社でやる」という当たり前のルールを徹底しました。
その結果、現場の残業は以前より増えました。
しかし、それまで年間8,700万円から1億500万円あった外注費は、4,000万円から5,300万円程度まで減少しました。
金額が大きかっただけに、一気には変えられません。
発注先との調整や社内体制の見直しを進めながら、是正には一年以上かかりました。
それでも、この改善だけで会社の利益は大きく変わりました。
私はこの出来事以来、「みんなで力を合わせて会社を立て直す」みたいなドラマを見る目が少し変わりました。
「従業員は会社のことを考えて行動してくれる善人。」
そんな前提で話が進むのは、現実ではなかなかありません。
少し寂しい話ですが、それが私の経験です。