カテゴリー: 経営

  • 町工場の決算書を見て、現場へ行くのをやめました。

    2015年、私は地元へ戻り、祖父が創業した町工場に入りました。

    それまでは、某メーカーで工業製品の開発に携わっていました。

    当初は現場から仕事を覚えるつもりでした。

    役員の息子が、いきなり経営に口を出すのは違うと思っていたからです。

    しかし、その考えは会社の決算書を見た瞬間に変わりました。


    入社して間もなく会社の決算書を見る機会がありました。

    当時の会社は3期連続の赤字でした。

    年間売上は3億円台。

    借入金は約4億円。

    純資産も決して余裕があるとは言えない状況でした。

    その数字を見た瞬間、

    「現場を覚えてから」では間に合わない。

    そう思いました。


    しかし、その危機感を持っていたのは私だけでした。

    当時の役員はほとんどが親族でした。

    現場経験は豊富でしたが、会社全体の数字や決算内容を把握している人は社長を含めてだれひとりとしていませんでした。

    経常利益という言葉を知らない人もいました。

    「何十年も続いてきた会社だから、そう簡単には潰れない。」

    そんな空気が会社にはありました。

    だから私は、会社を変えるためにやるべきことがあると思いました。

    会社の現状を、全員で理解することです。


    そこで、毎週役員全員が集まり、業績について話し合う会議を始めました。

    私は経営を学んできた人間ではありません。

    決算書の読み方も分かりませんでした。

    本を読み、インターネットで調べ、自分なりに理解したことを、できるだけ分かりやすく説明しました。

    役員は高齢者ばかり。

    話は何度も世間話に脱線する。

    また会社の数字に戻す。

    その繰り返しでした。

    一度説明しただけでは伝わりません。

    同じ話を何度も繰り返しました。

    だから毎回議事録を作り、全員に配りました。

    記録を残すためではありません。

    決めたことを、その場限りで終わらせないためです。


    当時、会社では「まず売上を増やそう」という考え方が当たり前でした。

    もちろん、売上は大切です。

    利益の原資でもあります。

    でも私は最初から、会社を強くするのは売上ではなく、利益を残すことだと考えていました。

    問題は、その考え方をどう伝えるかでした。

    数字を説明するだけでは、人の考え方は変わりません。

    会社の置かれている現状を理解し、「このままではまずい」と同じ危機感を持ってもらうこと。

    それが、一番時間のかかった仕事だったように思います。


    今振り返ると、会社が変わり始めたのは、利益が増えた日でも、経費が減った日でもありません。

    会社を見る目が変わり始めた日だったように思います。


    おわりに

    このブログでは、町工場を経営する中で経験したことを、できるだけ事実に基づいて書いていこうと思います。

    「これが正解です。」

    そんなことを書くつもりはありません。

    会社にはそれぞれ事情があります。

    業種も規模も違います。

    だから私が書くのは正解ではなく、

    「当時、私はなぜそう判断したのか。」

    という記録です。

    もし、この経験が家業を継いだ人や、中小企業で経営に悩む人にとって、一つの判断材料になれば嬉しく思います。


    次回予告

    売上を増やす前に、私が最初に取り組んだのは「経費削減」でした。